根津神社 表情豊かな夏のツツジ

短い梅雨が明け7月に入り、東京はひとっ飛びで真夏へと向かって日中の気温をぐんぐん上げています。強まる日差しに、街の木々も緑の深さを日に日に増しているようです。そんな平成最後の夏の始まりにご紹介するのは、日本人に親しみ深い低木、ツツジです。

アジアに広く分布するツツジは、日本でも古くから園芸品種として親しまれ、交配を重ねて多くの品種が生み出されてきました。そのため多くのツツジの仲間が、春には白や淡いピンク、濃い赤や紫など鮮やかな花を咲かせ、人々の目を楽しませてくれています。ですが花が見頃の春が過ぎ、夏の青々としたツツジに目を向けることはあまり無いのではないでしょうか。

 

 

文京区根津、この地にある根津神社はツツジの名所として知られています。境内の3000株を超えるツツジは3月の終わりから5月にかけて色とりどりに咲き競い、この時期のつつじまつりには毎年多くの人が訪れます。

根津神社のツツジは花を散らすと、きれいに剪定された丸い姿を保ったまま新葉を開きます。葉の色が一段と濃くなる今の季節、もこもことしたツツジの姿は苔むした岩のようにも、あるいは小さな森のようにも見えます。

 

 

 

強い日差しが少しずつ陰る夕方、連なる株の陰影は深まり、より一層豊かな緑の表情を見ることができます。
春に咲く花や、秋の紅葉が見どころの樹木も、少し時期をずらして見てみることで、このように新鮮な美しさを発見することができるかもしれません。

コブシ 芳香の田打ち桜

この3月は平年より気温が高く、各地から続々と桜の便りが届きました。東京でも24日に観測史上3番目の早さで桜が満開となり、その後はお花見日和の晴天が続いています。

東京都千代田区、皇居に隣接する都心のオアシス日比谷公園でも、暖かな陽気に誘われて桜やチューリップ、菜の花など春の植物が見頃を迎えています。
その中で桜に比べて控えめな姿ながら、芳しい香りで道行く人を惹きつける木を見つけました。早春を代表する花木、コブシです。


コブシの花はヘラのような形の白い花びらを大きく広げ、香水の原料にもなる強い香りを放つのが特徴です。早春の山野に咲く白い花が麓からも見つけやすく、日本各地でこの時期の農作業の目安になったと言います。
門出の春、華やかな桜が人々を祝福するように咲くのであれば、慎ましく白いコブシの花は、シャンと背筋を伸ばしてくれるような佇まいです。
新年度の始まり。樹木に目をやる余裕を忘れず、気分新たに参りましょう。

 

カンヒザクラ 力強い春の息吹

3月の始まりとともに春一番が吹き、気温が一気に上昇した今週。暖かな日差しの中で、一際鮮やかな早咲きのサクラをご紹介します。

浜離宮恩賜庭園はすぐ側にオフィスビルが立ち並び、目の前を首都高が通る都心の喧騒の中にありますが、一歩足を踏み入れると四季折々の草木が美しい、穏やかな空間が広がっています。この時期、園内ではさまざまな種類の梅や、ぐんと成長した菜の花が来園者の目を楽しませてくれますが、中でも一際濃く鮮やかな色で視線を集めるのがカンヒザクラです。

 

カンヒザクラは中国南部〜台湾に自生し、日本では沖縄でよく見られるサクラの原種の一つです。ビビットな緋紅色の半開した花が、釣鐘状に下を向いて咲く姿が特徴で、淡いピンク色のサクラをイメージするとその違いに驚くかもしれません。散り方も他のサクラの様に花びら一枚ずつ散るのではなく、萼ごとぼとっと落ちていきます。

 

カンヒザクラは、淡い色の花々が多い季節にあって、春霞を吹き飛ばすような力強さがあります。目の覚めるような春の息吹を感じに、浜離宮恩賜庭園へ訪れてみてはいかがでしょうか。

梅林坂 天神様ゆかりの春告草

受験シーズンの真っ只中の2月。今回は学問の神様として祀られている菅原道真にゆかりの深い木をご紹介します。
東京都千代田区、皇居の東側に位置する皇居東御苑には「梅林坂」というその名の通り梅の木の名所があります。旧江戸城本丸に向かって緩やかに続く梅林坂には約70本の梅が立ち並び、歴史ある石垣と相まって美しい風景を生み出しています。始まりは江戸城を築いた太田道灌が菅原道真を祀ってこの辺りに梅を数百株植えたことと言われ、現在の木々は皇居東御苑の開苑に向けて昭和42年に植えられました。
菅原道真は梅をこよなく愛したと言われ、5歳にして梅の美しさについて詠った歌が残されているほどです。太田道灌がこの地に建立した天満宮は徳川家康の入場後に場所が移されていますが(現在の麹町・平河天満宮)、天満宮には欠かせない梅の木は今も変わらず梅林坂で咲き続けています。
ここでは12月の早咲きから3月の遅咲きまで、長い期間さまざまな種類の梅を楽しむことができます。今の時期は白梅から紅梅まで淡いグラデーションが美しく、この一帯だけ明るく感じられるほどの華やかさでした。
現在ちょうど皇居東御苑の目の前にある国立公文書館で、太田道灌と江戸にまつわる史料の展示が行われています。江戸城が築かれる前後の歴史や天満宮建立当時の様子を窺い知ることができ、梅林坂の風景もより一層味わい深く感じられるのではないでしょうか。

ロウバイ 艶やかな春の便り

日本列島を記録的な寒波が襲い、葉を落とした冬木が一層寒々しく感じられる今日この頃。新宿御苑では一足早く春の香りを運ぶ黄色い花が見頃を迎えていました。

艶やかな花びらが特徴のロウバイです。
ロウバイ(蝋梅)という名の由来は、蜜蝋のように光沢のある花から梅に似た香りがするからとも、陰暦の朧月(おぼろづき、ろうげつ)に咲くからとも言われています。英名ではWinter sweet、その名の通り足元にまだ雪が残る新宿御苑でも、ロウバイからはふんわりと甘い香りが漂っていました。
苑内では、花の中心が褐色がかった紫色をしているロウバイの基本種と、黄色一色のソシンロウバイという種類が見られます。
基本種は花びらが細長く、ひらひらと繊細な印象。対してソシンロウバイは花びらが丸く、ころんとした可愛らしい形をしています。
低木で花はやや下を向いて咲くため、種類による花の違いや、うっすらと光が透ける花びらを目の高さで楽しめます。
ロウバイの見頃は2月中旬頃まで。
芳しい香りと蝋細工のような艶は、春はもうすぐそこと、私たちに知らせてくれているようです。