2020年に鎮座百年を迎える明治神宮の外拝殿の前には三本の大きな楠が立っています。大正9年の鎮座当時に献木され、本殿が焼失したという終戦間際の空襲をも生き抜いた明治神宮の御神木です。
一本は拝殿の向かって右側、周囲をぐるりと囲むように絵馬が掛けられ参拝客が賑やかに集まっています。その反対、拝殿の向かって左側にはあとの二本が並んで立っています。こちらは二本が大きなしめ縄で結ばれており、その寄り添うような姿から「夫婦楠」と呼ばれ、縁結びや家内安全のパワースポットとして親しまれています。
クスノキは、厚みのある葉を高い密度でびっしりとつけ、丸みのあるもこもことした形が特徴的な木です。拝殿の前に立つと、この夫婦楠は絵馬の楠と左右で対を成すように、ひとつの大きな樹冠を成しているのが分かります。根元から見上げると、二本がそれぞれの境目が分からないほど互いに枝葉を伸ばしており、まさに二本でひとつ、”夫婦”と言うにふさわしい姿を目にすることができます。
※クスノキは明治神宮の森をつくる上でも欠かすことのできない木です。
明治神宮ができるまでは関東ロームの荒地であったこの地を、百年先まで続く森にするため常緑の広葉樹が多く植えられました。クスノキもそのひとつで、境内に約9000本が植えられたと言います。※
さて空襲で焼失した神宮本殿ですが、その後昭和33年に復興してから約60年が経ちました。明治神宮では現在、鎮座百年の記念事業の一環として、経年劣化が進んだ本殿をはじめとする御社殿の屋根の銅板の葺替工事が行われています。取材当時、三本の楠の背後にある外拝殿は写真シートで覆われていましたが、今年の11月以降、順次シートは外されていくとのことです。
今後50年、100年と残る新しい社の完成を、拝殿前で今も変わらず枝葉を広げ参拝客を迎えている楠、そして神宮の森を成す木々と共に楽しみに待つことにしましょう。