真夏に花をつける樹木は、それほど多くありません。
夏のはじまりから秋にかけて、季節をまたぐように花を咲かすとなればなおさら、 数えるほどです。梅や桜など馴染みある花が見頃の春と、紅葉と共に金木犀が香りを運ぶ秋の間にあって、夏の樹木は花というより青々とした葉のイメージが強いのではないでしょうか。
そんな中、夏真っ盛りの8月に見頃を迎えるのがサルスベリです。
サルスベリは猿でも足を滑らせてしまうほどすべすべとした樹皮の様子からその名で呼ばれていますが、別名を百日紅(ヒャクジツコウ)と言います。これはサルスベリの花を咲かせる期間の長さに由来していますが、早いもので7月から遅いものは10月までと、“百日”も決して大げさではありません。
強い日差しの中で濃紅や白色の花を枝先いっぱいに咲かせた、盛夏のサルスベリの美しさは言うまでもありませんが、“百日”間のサルスベリの変化が楽しめるのがちょうど今、初秋に当たる9月~10月です。
まだまだ鮮やかな花を次々と咲かせ、夏の勢いを保っているもの。秋の風に乗ってその花を散らすもの。同じ場所にあっても枝の生育にばらつきがあるサルスベリはこの時期、まさに移りゆく季節を表すように一本いっぽん異なる姿を見せています。
調布にある神代植物公園の一角、「さるすべり・ざくろ園」でも様々な姿のサルスベリを見ることができます。こちらのサルスベリは庭木や街路樹として剪定された小ぶりなそれとは異なり、自然のまま横に大きく枝を広げています。背丈も街中で見るより高く、枝先の濃紅の花が秋晴れの空に良く映えています。紅い花のサルスベリの奥で白い花を咲かせているのは、シマサルスベリという種類です。班模様の樹皮が特徴的なこちらはちょうど花が散り始めており、ちりめんのようなくしゃっとした細かい花が雪のように舞っていました。
神代植物公園の中で「さるすべり・ざくろ園」は、深大寺につながる門の近くにあります。
サルスベリの木々に新しい季節の訪れを感じた後は、新そばも美味しい深大寺へ秋の散策へと参りましょう。